2015年7月26日

体験的上方歌舞伎論-『上方歌舞伎の風景』『戦後の関西歌舞伎』



上方歌舞伎や関西歌舞伎という言葉は残っていますが、じつは実態としてはほとんど滅んでしまっているいるということを知っている若い歌舞伎ファンは多くありません。私自身も、上方歌舞伎あるいは関西歌舞伎なるものが存在したということは書物の上でしか知らないわけです。すでに滅んでしまった関西歌舞伎の最終局面を体験的に綴っているのが、権藤芳一氏の上方歌舞伎の風景と、島津忠夫氏の戦後の関西歌舞伎―私の劇評ノートからです。いずれも貴重な体験的上方歌舞伎・関西歌舞伎論であり、初めて読んだときには非常な衝撃を受けました。私が上方歌舞伎あるいは関西歌舞伎ということを強烈に意識するようになったのは、この2冊を読んでからです。
2015年7月17日

科学的歌舞伎批評はここから始まった-『観劇偶評』



歌舞伎の型について勉強する場合、絶対によんでおかないといけない本というものがあります。三木竹二の観劇偶評(岩波文庫)は、その第一冊目に必ず挙がる本といえるでしょう。現在、私たちが読んでいるような劇評の叙述の基本形を作ったとも言えますし、なにより科学的な歌舞伎批評のスタイルを日本で初めて実践したのが三木竹二の劇評でした。三木竹二の劇評を読むと、明治の名優たちの演技が甦ります。
2015年7月8日

歌舞伎鑑賞の虎の巻‐『歌舞伎手帖』



ある人が「歌舞伎なんてものは、次に舞台で何が起こるかわかったうえで見るものだ」といっていましたが、まったくその通りでして、話の筋から演出方法まで分かったうえで見ることで、かえって役者の工夫や味わいが見えてくるものです。。だから番付を読めばストーリーから見どころまで懇切丁寧に解説されているわけですが、それなら普段からもう少し深く狂言の内容を予習したり、見どころもや解釈についても勉強したいと思えばどうするか。そんなときに鑑賞の虎の巻として座右に置いておくと便利な一冊が渡辺保氏の増補版 歌舞伎手帖 (角川ソフィア文庫)です。
2015年7月2日

鴈治郎の芸風が分かった-大阪歴史博物館「初世中村鴈治郎」特別展

大阪歴史博物館で特別企画展「初世中村鴈治郎‐上方歌舞伎の巨星‐」が始まりました。じつは大阪歴史博物館には初代鴈治郎の贔屓だった今中富之助氏が蒐集した資料が「今中コレクション」として所蔵されており、おそらく日本でもっとも初代鴈治郎関連の資料を保管する博物館なのです。仕事の関係で一足先に見てきましたが、初代鴈治郎に関する錦絵、写真、舞台衣装、小道具などゆかり品を通じて鴈治郎の芸と人を知る特別展となっています。

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